当研究室志望の皆さんへ

研究室主宰者からのメッセージ

⚗️有機合成化学は素晴らしい学問です💊

当研究室のHPを閲覧頂き、ありがとうございます。研究室を考えている3年生の皆さんに、あえて日本語でお伝えしたいことが幾つかあります。

 有機合成化学は鳥取大学の基本理念「知と実践の融合」が高い次元で求められる素晴らしい学問です。父親が研究室の学生さんの実験進捗を確認したり、合成した化合物をNMRで分析したりする姿を見て育ったので、私(野上)が有機合成化学を自分で志したとは言い難いですが、自信をもって人の役に立つ重要な分野の研究をしていると言えます。有機合成化学は低分子医薬の製造における基盤技術であり、我々の生活を豊かにする様々な化成品に関わっています。従って、有機合成化学は日本が誇るものづくりであると同時に、合成法の先端技術化を通じて将来にわたり高い生産技術力を維持する必要があります。

 大学の研究も安全第一です。そのためには安全に実験を行うための準備が必要です。日頃の整理整頓、丁寧な器具の取り扱い、試薬・反応に対する知識の取得、廃液・試薬の適切な廃棄、安全かつ成功裏に有機合成を行うためにはどれも欠かせません。大学院時代に指導して頂いた先生が実験室の整理整頓に関して褒めて下さったのも励みになっています。

 有機合成の経験が無くても、反応スキームがあやふやでも大丈夫です。望まない副反応は反応スキームに書いていなくても起こります。標的化合物を合成する、収率を上げるという信念が最も大切なので、知識は後から身に付けても構いません。私は大学院で初めて有機合成を経験しましたが、幸いなことに先輩が実験操作を丁寧に教えてくれました。シリンジの実験台への置き方、ニードルの取り扱い、ガラス器具の乾燥方法、その一つ一つが身に付けた習慣とも呼べる私にとっての財産です。

 何故、糖や電気(電子移動)を用いた合成研究を行うか、恥ずかしながら最初から自分に信念があった訳ではありません。糖自体に発光などの物性はありませんが、機能を付与すること一つ考えても、選択的に有機合成する上での課題は山積みです。なお、糖(単糖)がつながったオリゴ糖には様々な生物機能があり、生物活性分子として重要です。新しいオリゴ糖を開発して、生物機能の制御や機能性材料として利用することも目指しています。電気は酸化と還元の両方が同時に行える素晴らしい反応剤と見なせますし、酸化還元反応が可逆なら、その化合物は二次電池の活物質にもなります。電気を自然エネルギーで発電すれば、糖・電気はそれぞれ無尽蔵な原料・試薬と言えるので、この両方に立脚する我々の有機合成化学は将来に渡って持続的に新しい物質や反応を生み出せます。また、これからは単に低分子の有機合成ではなく、分子どうしが形成する構造や機能の解明と応用も重要であり、糖・電気をキーワードに新しい物質科学の創造も目指しています。

 最後になりますが、風紋祭でのクレープ屋も仮装して走る駅伝大会も当研究室の重要なイベントですが、何事も強制はしません。尊敬する同僚であると同時に可愛い教え子でもある佐々木紀彦先生や研究室の学生さんたちと、鳥取大学で画期的な合成法、有用な化合物や誰もが驚くような構造・機能を生み出したいという目標に対して、情熱を持って取り組んでいます。皆さんの有機合成化学への挑戦を心から歓迎します。

2025年1月8日 野上敏材